COVID-19が流行する中、川崎病に似た症状をみせる小児患者の報告が欧米で相次いでいます。一方で日本川崎病学会は、日本と周辺のアジア諸国では欧米のような症例は発生していないとの調査結果を発表しています。
■欧米で相次ぐ川崎病類似症状の報告
COVID-19の流行後、米国、英国、フランス、イタリアなどで川崎病に似た症状のある小児患者が見つかっているとの報告があります。これらの関連を示唆する論文も発表されています。
英医学誌ランセットは、川崎病に似た症状でPICU(小児集中治療室)に搬入された8人の患者に関する英国の病院の報告を公開しています。8人の症状は似ており、38~40度の高熱、発疹、結膜炎、浮腫、四肢の痛み、消化器症状がみられました。1人が死亡し、7人が回復しています。SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)の感染については、死亡した1人を含む計2人がPCR検査で陽性でした。その他の6人はPCR検査で陰性だったのですが、5人は家族に感染者がいたといい、ウイルスに暴露した可能性があるのだそうです。その後、同様の症状のある患者が増え、この病院では計20人(前述の8人を含む)の治療を行ったとのことです。
また米国小児科学会の学術誌ホスピタル・ペディアトリクスには、川崎病と診断されて入院した6カ月の女の子についての報告が発表されています。SARS-CoV-2の感染についてはPCR検査で陽性だっとのこと。川崎病の治療ガイドラインに沿って治療を実施したところ、回復したそうです。
■日本では確認されず
一方で、日本川崎病学会が行った国内状況の調査によると、欧米と同様のケースは確認されていないといいます。
学会は、川崎病の診療を行っている全国の専門家56人に対してアンケート調査を実施し、18都道府県32施設の34人から回答を得ました。アンケートでは、国内のCOVID-19感染者が増えてきた今年2~4月に▽例年と比較して川崎病の発生状況に変化があったか▽川崎病の重症度や重症例の発生状況に変化があったか▽COVID-19の患者を診療した場合、川崎病を疑う症例が存在したか――などを聞いています。
その結果、川崎病の発生数が増加したとの回答はありませんでした。それどころか、19人は発生数が減少したと回答しています。川崎病の重症度と重症例の発生状況についても、例年と比べて変化していないとした回答者が大多数を占めました。 また、回答者が診療したCOVID-19患者は計27人で、全て軽症か無症状で川崎病を疑う症例はありませんでした。
さらに学会は、アジア各国の状況についても調査を進めています。現状では欧米と同様の例は把握されていないとのことです。特に韓国は、川崎病患者を含む全ての発熱患者に対してSARS-CoV-2のPCR検査を行っていますが、川崎病患者の中に陽性例は一例もないそうです。
学会は「少なくとも現在、欧米で報告されているような状況は(国内では)確認されなかった」とした上で、「川崎病とCOVID-19との関連についてはその動向を冷静に注視する」としています。
【memo】川崎病
主として4歳以下の乳幼児に好発する原因不明の疾患
<主要症状>
1.発熱
2.両側眼球結膜の充血
3.口唇、口腔所見:口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
4.発疹(BCG 接種痕の発赤を含む)
5.四肢末端の変化
急性期:手足の硬性浮腫、手掌足底または指趾先端の紅斑
回復期:指先からの膜様落屑
6.急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹
・川崎病の診断
1~6のうち当てはまるものが5つ以上ある場合
1~6のうち当てはまるものが4つで、冠動脈病変を呈する場合
※『川崎病診断の手引き改訂第6版』を基に作成
川崎病とCOVID-19との関連を指摘する論文はこちら>>> Hyperinflammatory shock in children during COVID-19 pandemic
日本川崎病学会による調査の詳細はこちら>>> 日本川崎病学会声明:川崎病と COVID-19 に関する報道について
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